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東京地方裁判所 昭和34年(むのト)50号 判決

被疑者 塚越国威

決  定

(被疑者・請求人氏名略)

右被疑者に対する公務執行妨害被疑事件について、右請求人から勾留理由開示の請求があつたので次のとおり決定する。

主文

本件請求を却下する。

理由

請求人が被疑者との間に刑事訴訟法第八十二条第二項掲記の身分関係を有せず、且つ被疑者の弁護人、法定代理人・保佐人のいずれでもないことは本件勾留理由開示請求書の記載自体から明らかである。

そこで請求人が同条同項にいう利害関係人に該当するかどうかについて判断する。

刑事訴訟法第八十二条の文理、同条の規定と同法第三百五十四条、第三十条、第七十九条の各規定との権衡等及び現実の必要の程度から考えると、いわゆる利害関係人の範囲は当該被告人又は被疑者との間に身分的関係又はこれに類する関係(例えば法人の役員相互間の関係)があり且つ、被告人或は被疑者が勾留されることについて、刑事訴訟法第八十二条第二項掲記の身分関係ある者が自己の親族の勾留により通常受くべき影響にも比すべき直接且つ重大な利害関係を有する者に限ると解するのが相当であると思料する。憲法第三十四条の規定を根拠として、なんらかの直接間接の利害関係ある者すべてを右利害関係人の範囲に含ませるのは相当でない。

ところで本件請求書の記載によれば請求人は全金属労働組合東京地方本部三豊製作所支部の執行委員であり、被疑者も亦同支部の執行委員であるというのであるから被疑者との間に前示の「身分的関係に類する関係」を有すると解し得られないではないが、それだけでは直ちに前示の「直接且つ重大な利害関係」を有するとまでは認められないから結局本件請求人は利害関係人たる要件を欠き本件勾留理由開示請求は不適法といわざるを得ない。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 篠清)

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